持続可能性や循環型経済へのシフトといった、大きな方向性を意識する動きがますます広がり、今後数年間、カラーにも強い影響を与えるだろう。メタバースにおけるバーチャルムードいっぱいの美的感覚とカラーは、境界線を取り払うためのクリエイティブな表現であり、デジタル領域における色彩効果は、現実世界にインスピレーションとして逆輸入され、日常を超えた感覚をもたらしてくれる。ポリクライシスに対処し続ける人々の気分を高めるためにも、ウェルネスカラーへのニーズは高まるばかりだ。

メタバースの内側でも外側でも革新的な創作活動に影響を与える、3つの主要なカラーイノベーションを探る。

1. 変幻自在のエフェクト

デジタル世界で繰り広げられるクリエイションは、物理的な世界に新しさと可能性をフィードバックし、圧倒されるような気分にもしてくれる。この、空想が現実世界でのアイデアを形作るというメタイマジネーションの概念は、メタバースによって加速していくだろう。John Hoganの最新のガラス作品は、Krista KimのMars House NFTに似た半透明のプリズムのような質感を生み出している。イタリアを拠点とするアーティスト、Gioele Amaroは、キャンバスにデジタルペイントを施し、ニスや絵具を重ねることで光沢のある虹色を生み出し、バーチャルの美的感覚を物理的な世界と融合させた作品をみせた。

2.AI生成カラー

AIと機械学習が進化し続ける中、イノベーターはそれらを活用して色の創造、組合せ、効果を強化することができるようになるだろう。アメリカの塗料サプライヤーであるSherwin Williamsは、気分やシナリオなど記述内容に合わせてカラーパレットをカスタマイズできる、AI搭載の塗料ツール「Speaking in Colour」を提供している。また、HuemintやKhromaなどのカラーパレットジェネレーターは、機械学習によってブランディング、ウェブサイト、グラフィック向けの独自のカラースキーム作成を行っている。

3. 目的をもった色

多くの危機を経験したことで、人は日々の生活の中でも自覚的に意思決定をするようになった。様々な業種の企業が世に送るデザインもまた、そのような動きを反映し、ウェルネスを意識した高揚感のある色を使用している状況が見て取れる。くっきりとした色とパステルカラーを合わせた、新鮮で癒しに満ちた感覚の中、かつ元気が湧いてくるようなパレット。イタリアの Florim and CEDIT – Ceramiche d’Italiaは、その好例で、バーチャルリアリティ展示に来場した人々をその色使いでこころ穏やかで夢のような世界に誘った。

キーポイント

世界が物理的にもデジタル的にも進化していく中、画期的なカラーシステムや戦略を開発することは、インスピレーションいっぱいのカラーパレットを生み出すことと並んで重要だ。テクノロジーの進化に伴い、デザイナーはAIや機械学習ツールを活用し、物理的・デジタル的な世界の両方から感覚刺激を受けるようになっている。社会的不安が続く中で見られる、癒されるような、人智を超えた畏敬の念を抱かせるような色によって物理とデジタルの境界線を取り払っていく動きに注目したい。

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