メイン画像:Clung by Osinachi
図書館の司書であったオシナチがWeb3の世界に飛び込んだ理由は、根強く残る社会的な壁を飛び越えて、自分の作品を世に送り出したいという強い願いがあったからだ。
アフリカ初のNFTアーティストとして広く知られる彼の作品は、いまや、クリスティーズのオークションハウスやトレド美術館を含む世界有数のミュージアムでコレクションとして収蔵されている。今回の対談では、アフリカにおけるデジタルアートコミュニティと将来のビジョンについて語ってくれた。
デジタル時代における芸術の価値の再定義
-どのようなきっかけでWeb3に興味を持ったのですか。
オシナチ:私は当初、マイクロソフトのワードを好んで使っていました。自分の作品を制作し、そのストーリーを語るのにぴったりだと思ったからです。
ところが、自分の作品を知ってもらうためにギャラリーに連絡を取ると、私の作品のアートとしての正統性や価値に疑いをもたれるという状況に直面しました。まだ、Web3やデジタルアートの価値が認識され始めたばかりのころのことです。
2017年のブロックチェーンとの出会いはわたしにとって画期的でした。間違いなく私の作品であることと、その価値を証明してくれるこの仕組みのおかげで、私は伝統的な美術界の介入を受けることなく、世界中の愛好家とつながり、たとえば、トレド美術館とのコラボレーションのような、素晴らしい機会を得ることができたのです。
-あなたがスタートしたときのナイジェリアにおけるWeb3の状況について教えてください。
オシナチ:まだニッチな空間でしたね。コロナの影響でWeb3に興味を持つ人は増えましたが、すぐには普及するというわけではありませんでした。
暗号資産には懐疑的な見方が多く、インフラも整っていませんでした。デバイスは高価ですし、インターネットは遅い。銀行は暗号取引を禁止していました。
今日、より多くの人々がWeb3の世界を探求していますが、まだ一般的になるまでには長い道のりがあるでしょう。アフリカのデジタルアートが発展するためには、アーティストやアートを支援する人々が集まるようなエコシステムを育成する必要があります。それが、私が「Africa Here」を通じて行おうとしていることでもあるのです。
国内外を問わずコレクターとつながるためのツールとプラットフォームを提供し、デジタルアーティストとアフリカのアート作品を広げていきたいと思っています。
ブロックチェーンが真実を発信する道を開く
-Web3はあなたのようなアーティストにどのような影響をもたらしているでしょうか?
オシナチ:Web3は、多くのアフリカ人アーティストが伝統的なアートシーンの「ルール」を乗り越える力、それからより多くの観客に自分たちの本当の物語を直接的に語る場所を与えてくれました。また、経済的な状況もWeb3の登場で一変しました。
アフリカだけではありませんが、世界の多くの地域において、デジタルアーティストは生計を立てるために、企業から依頼される、つまらないグラフィックデザインの仕事をすることが多かったわけです。
それがいま、私たちは自分のアート活動への対価を直接受け取れます。生き残るための手段として、デザインの仕事を請け負うのではなく、自分たちのストーリーを伝えることができるようになりました。アーティストはより平等な立場で、ブランド、アートを扱う専門機関と公平で透明性の高いコラボレーションを実現することが可能になったのです。
世界のアート談義の場を盛りたてる
-希望に満ちたアフリカンアートの未来、世界における立場を確立するためにWeb3にはなにができるでしょうか。
オシナチ:Web3は、出身地がナイジェリアであっても、セネガルや南アフリカであっても関係なく、アーティストが世界的な議論の場に直接参加する力を与えてくれます。
私が国外で作品を発表する理由は、単にアートを展示する場所を得るためだけではありません。アフリカ出身のアーティストとしての私のストーリーを世界と共有するためです。私の作品がそこにあることで、文化や人種など、さまざまなトピックについて有意義な会話が交わされています。
「ブラックライブズマター運動」が起こってから、世界的にアフリカへの注目度は高まっていますが、私たちにはまだ取り組むべきことがたくさんあります。アフリカ出身のアーティストの知名度はまだ低いですし、私たちのアートがアフリカ大陸を越えて発展できるようなエコシステムを育てる必要があります。
将来、私たちのアートは、音楽界におけるアフロビートと同じように、世界的な影響力を持つようになるはずです。時間はかかるかもしれませんが、夜明けはそう遠くないと信じています。
プロフィール
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オシナチ
オシナチ
プリンス・ジャコン・オシナチ・イグウェとしても知られるオシナチ氏は、ラゴス出身のデジタルアーティスト。15年以上にわたり、独学でマイクロソフトワードを用いてアートを制作。パーソナルな経験をアートに昇華させる独自のスタイルを確立してきた。2021年、アフリカ人アーティストとして初めてクリスティーズのNFTオークションに出品。2022年には、NFTのマーケットプレイスMakersPlaceに70人以上のアフリカ出身アーティストを参加させるアクセラレータープログラム「Africa Here」を企画し、そのうち6人のアーティストが、アートバーゼルマイアミのSCOPE Art Showで作品を展示した。また、AfrofutureDAOの中心的な発起人の一人であり、New African Magazine誌の「2022年最も影響力のあるアフリカ人100人」に選出された。
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