The Fabricantがミラーワールド / デジタル空間のファッションに革命を起こす

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※「The Fabricant (ファブリカント)」 は「衣服が物理的である必要はない」という信念を世界に伝えるために2018年1月1日にアムステルダムで設立されたデジタルファッションハウス

デジタルファッションは、メタバースでもっとも魅力的な領域の1つと考えられており、バーチャルな世界とリアルの世界の両方で、私たちのアイデンティティと自己表現の方法を変革するだろう。アムステルダムを拠点とするデジタルファッションハウス、The Fabricantは、このムーブメントの最前線に立とうとしている。マーケティング兼グロース担当責任者であるニルマラ・ショームがデジタルファッションの未来についてのビジョンを語る。

未来の自己表現のフロンティア

現在のファッション産業は、衣服の生産にかかわる倫理的側面と持続可能性の側面で多くの課題に直面している。マッキンゼーによると、新しい衣服が5着つくられるたびに、3着の古い衣服は埋立地に運ばれ、廃棄されているという。このような状況のなかで、The Fabricantは物理的な影響を抑えつつ、無限の自己表現を可能にする「デジタルファッション」というオルタナティブな手段を提供している。

The Fabricantのマーケティング兼グロース担当責任者ニルマラ・ショームは、若い世代がバーチャルな世界でより多くの時間を過ごすようになれば、デジタルファッションの需要が高まるのは当然のことだと指摘する。現在のバーチャルな世界は、すでにオフラインでの人々の行動に影響を与えている。Robloxが2022年に行なった調査では、ユーザーの70%が自分のアバターからリアルなファッションのヒントを得ていることが明らかになった。

ショームは「オフラインで実物のジャケットを買ったとしたら、バーチャルにいる自分のアバターもそれを着ることができるようになるべきです。デジタルファッションは、バーチャルとリアルの両方の世界で、実感を伴った表現を可能にするものなのです」と言う。

「デジタルファッションは伝統的なファッション業界を追い越し、未来のサブカルチャーの原動力になるはず。わたしたちはこの動きをリードしていきたい」

Image: The Fabricant, Primal Rave Collection
Image: The Fabricant, Primal Rave, Forbidden Fruit

「デジタル・クラフトマンシップ」を通じて感情を揺さぶる

The Fabricantのデジタルファッションの製作は、その技術の複雑さと創造性の両方で、物理的なクチュール(仕立て)に匹敵する芸術的プロセスである。デジタルファッションは、経験豊富な革新的デザイナーとパタンナーとの協業によって生まれるが、ショームはそれを「まさに本物の質感を感じられる」ほどのクリエイティビティと表現する。

「私たちはユーザーの感情に働きかけたい。The Fabricantのデジタルファッションは物理的に触れることはできませんが、ディテールの表現や動き、サウンドを通じて、そのリアルさを提供します。技術的に可能な限りの没入感でファッションを体感してもらうためです」とショームは言う。

「秘密の森のレイヴ」をコンセプトにしたコレクション『Primal Rave』は、サテンやシルク、ビーズのついたフリンジの見た目と手触りをデジタルテキスタイルで完璧に再現してみせる。それぞれの服の背景には豊かなナラティブが添えられ、さまざまなキャラクターのストーリーを伝えることで、リアルなファッションと同様か、それ以上にインパクトのあるものになっている。

Image: The Fabricant, LEELA

「デジタルクラフトマンシップへのこだわりが私たちの強みです。私たちのアイテムに物理的に触れることはできませんが、ディテールの表現、動き、音を通して本物の服の感覚を届けられるよう心がけています」

Image: The Fabricant x Alexa Sirbu, DEEP

次世代のファッションクリエイターをエンパワーメントする

The Fabricantの目下の使命は、デジタルファッションをつくり、シェアし、収益化する機会を、世界中のクリエイターに平等に提供するような、分散型エコシステムの設計・開発だ。ショームは「ファッションコミュニティは、私たちが成功するための重要な要素です。インタラクティブなワークショップや、Discord、YouTubeといったアクティブなチャンネルを通じてコミュニティを育成し、デジタルファッションを切り拓く人にツールを提供しています」と説明する。

ショームに「究極の野望は?」と質問すると、「The Fabricantを影響力の高い世界的なデジタルファッションの大企業に変えること」という。しかし、ショームにとってこのビジネスの真の魅力は、文化を前進させるデジタルファッションの可能性にある。「歴史的にみてファッションは、つねに文化的な革命の触媒として機能してきました」と振り返り、次のように続けた。「私たちはこの変容する時代の変革の担い手として、サブカルチャーとデジタル技術を融合させ、文化という体験を再定義する方法を模索しているのです」。

Image: Nirmala Shome

プロフィール

  • 2020年、The Fabricantに入社。これまでSpotify、Google Creative Lab、Xboxなどのプロダクト・イノベーション・チームメンバーを歴任し、新興テクノロジーによる消費者向けソリューションを提供してきた。現在は、ファブリカントのマーケティング・グロース部門を率いて、デジタル界におけるファッション・エコシステムを醸成し、The Fabricantの拡大のための舵取りを担う。新しい公平な経済のあり方としてのWeb3.0エコロジーが最近の関心事。

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