Fortnite、The Sims、Minecraft などのオンラインゲームプラットフォームは、何年も前からバーチャルワールドを開拓してきました。また、ユーザやゲーマーに、この果てしない世界を探索ながら、構造物やシステムを構築するなどの創造的な活動の場所を提供してきました。
メタバースは今後、独自の仮想経済を持ち、人々が働き、家を買い、創造性を発揮し、自分の資産を売ることができる、そんな場所になるでしょう。つまり、オンライン上で生活を築いたり、活動範囲を拡大したりすることができるようになるのです。このような変化は、クリエイションやデザイン、マテリアルにどのような影響をもたらすのでしょうか。
人々はメタバース上での居場所を必要とします。そのため、建築家やデザイナーは、新しい空間を創造し、拡張することが求められます。一方で、この新しく広がる世界で、誰を「建築家」とみなすのか、という点については変化がうまれると予想されています。
メタバース的あるいはゲーム的な建築と、本格的で物理的な建築の間には明確な違いがあります。空間そのものの特徴、またはその目的がいろいろな面で異なるからです。
メタバースでは、物理的な制約を乗り越えて、想像もできなかったような空間を、建築家とデザイナーは自由に創造することができます。重力、構造的安定性、気候などの現実の法則は、仮想現実では一切関係ありません。
一方、現段階では、メタバースにある建築は、五感のすべてを使って体感できるわけではありません。そのため、限られたリソースで雰囲気を表現し、視覚や聴覚の効果をより強調することが求められます。
メタバースにおけるデザイナーや建築家は、現実世界とは異なるスキルが求められます。3Dモデリングの知識を、デジタル世界特有のUXやUIデザイン、コーディング、さらにはゲームデザインといった領域のそれと掛け合わせ、建築の世界の自由度を高めるのです。そうなると、業界の人材像は再定義されていくことになるでしょう。
新型コロナ拡大以降、仮想世界の多くは、アニメ的、Web1.0的なデザインでしたが、私たちが進歩し、テクノロジーの進化のスピードも増すにつれて、より洗練されたリッチなデジタルデザインが登場します。
Six N FiveやAndrés Reisingerなどのデザイナーによるハイエンドなレンダリングデザインが台頭し、それに伴い、バーチャルワールドは幻想的で夢幻のような美しさを帯びてきています。玉虫色やホログラフィックの表面、誇張された植物、無限の滝といった「あり得ない」魅惑的な要素がみられます。また、デジタルソフトやエンジンもパワーアップし、羽、花びら、タッセル、金箔、マットなベルベットなど、レンダリングや3Dデザインによって、よりリアルな表面感を表現でき、臨場感のあるデザインが可能になってきています。
私たちは今後、自分の気分や感情をより客観的に見つめていくことになるでしょう。その中で、デジタル空間が人々にどのような感覚、あるいは気分をもたらしてくれるのか、という点がデザインにおいて意識されていきます。人間は感情的な存在です。そんなユーザに訴えかけていくには、単に楽しいという要素だけでは不十分です。色、テクスチャ、香り、音などを使って、癒しや刺激を与えるものが求められます。環境はより知覚的で心地よいものとなり、ミニマリズムは温かく詩的なデザインによって昇華されていきます。3Dアーティストたちは、気分を一新してくれるようなハイパーリアルなレンダリングによるデザインを通じて、空間デザインのこれからの方向性に影響を与えていくのです。
アクションポイント
静寂をもたらす
外に開いていく感覚と内面に向き合う意識、この二つのバランスがとれる、静かで瞑想的な空間をデザインします。オーガニックな質感と光と影の相互作用がもたらすコントラスト、おだやかな色調で気持ちを緩め、心を落ち着かせます。
現実逃避の場所を提供する
まどろんでいるような時間、あるいは懐かしい思い出の世界で展開する不思議なストーリーを描き、見る人をリラックスさせます。全体的に上品で豊かな色調、月明かりのような優しい光を選びます。
触感をイメージさせる
ふかふかのカーペット、柔らかなドレープとフリンジ、もこもことした膨らみのある小道具など、空間デザインに感覚的な要素を加え、触感を刺激します。ユーザが思いもよらない形で空間を体感できるような仕掛けをつくります。
活気と高揚感でエンゲージする
既成概念や制約にとらわれない発想と、予想をことごとく裏切るような、支離滅裂な世界観によって心をゆさぶり、エンゲージメントを高めます。光のグラデーションにインスパイアされた照明や、強い光沢のある素材を組み合わせて、気分を高めます。
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