自由な想像力が発揮できる、メタバース空間で生まれたワクワクするような素材は、不思議感いっぱいにわたしたちのこころを揺さぶる。そんなメタバースでのマテリアルが物理的な世界のインスピレーションとなりつつある。

よりよい未来を構築したいと考える建築家やデザイナーはメタバースにおいて「リアリティ」をもたらすものはなにかを想像し、新しいアイディアを探求し続けている。現在のちょっと漫画っぽいWeb1.0的な外観と雰囲気を超えて、より洗練された別世界級の美しさをもたらしてくれるようなデジタル素材を創り出すべく、バーチャルリアリティーの可能性を広げようと挑戦している。

デジタルソフトウェアの進化に伴い、レンダリングや3Dデザインは触感が伝わってくるようなリアルなものになってきた。デジタルCMFを使って、照明効果や環境を変えたりしながら、テクスチャー・パターン・仕上げのニュアンスを様々な形や素材に試している。また、色・光・影の組み合わせによる相互作用で、虹色やホログラムのような想像をかきたてる素材や色彩効果を生み出し、オンライン上に幻想的なエスケープ空間を創り出す。

こういったデジタルランドスケープは、現実社会の物理的な制約からユーザーを解放するだろう。建築事務所のSpace Popularは、自然を取り入れたバーチャル・テキスタイルをメタバースにおけるポータルとして使用し、デジタル上を移動するという時間を、現実世界では味わえないような驚きに満ちた、詩的とすら呼べる経験へと変化させている。デジタルアーティストのRik Oostenbroekによる、独特の色使いを抽象的でダイナミックなフォルムにのせたMirageという作品はまさに詩的だ。

そんなデジタル技術によって生み出された美意識は、現実世界でもアートやサーフェス、ウェアラブルとして具現化され、息をのむような感覚を実世界にフィードバックしている。

オーストラリアのアーティストMichael Staniakは、3Dスキャンによって洞窟の壁の質感を再現し、これまでにない表面感をもつ彫刻を制作した。デジタル画面と現実の境目がわからなくなるような高彩度の色と虹色で表現される質感が特徴的だ。モントリオール在住のファッションデザイナー、Ying Gaoは、VRの美的感覚にインスパイアされ、デジタルな動きをシュミレートするような、きらめくドレスを制作した。

デジタル世界によって現実がインスパイアされる

メタバースデザインの進化とテクノロジーの発展は、新しい美的感覚と素材を生み出し続けるだろう。現実世界からのインスピレーションをデジタルで表現することは直感的にできるが、デジタルの力によって人間の想像力を解き放ち、これまでなかった素材や美意識を現実世界で実験することがこれからは重要になる。オンライン・オフラインを問わず、日常生活からの逃避を求める傾向が続く中、刺激と驚きを求める人の欲求は高まる一方なのだ。

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