気候変動、原理主義的政治、物価上昇など、未来は暗いと多くの若者が感じている。歴史的に見れば、こうした混乱期には宗教への回帰傾向が高まるものだが、今日の若者は、テクノロジーなど別のところに現代生活の問題に対する答えを求めるようだ。
イノベーターは、スピリチュアリティという他者とつながる感覚がどのように生まれるのかを探り、伝統的な宗教儀式と革新的技術を融合させたアプローチによって実現し、またこの融合そのものに新しい意味を持たせようと考えている。同時に、物理的な肉体を離れる感覚や自己の内面を探る中で、人間が人間を超越した存在になるために、没入型やVRといったテックの可能性を追求しようとしている。実際、ある研究では、VRは幻覚剤と同じように作用し、人々を通常とは異なる感覚に導くことができると言う。
世界のメディテーション市場は、2027年までに90億ドルに達すると予想され、モバイルアプリからXRへと移行しつつある。ロサンゼルスに本社を置くTRIPPは、XRとバイノーラルオーディオや呼吸の視覚化などのメディテーション技術を融合させた、デジタル没入型ウェルネス・プラットフォームだ。ユーザーはVRヘッドセットを装着することで、圧倒的な感覚をもたらすサイケデリックな画像や呼吸法、ガイド付き瞑想、ゲーム、サウンドの世界に入り、穏やかさ、集中、悟り、つながり、といったさまざまなモードを体感できる。また、TRIPPは、ユーザーが集まって瞑想し、日常を離れた超越的な感覚を得るための共同セッションも提案している。
アイルランドのSolas VR社の瞑想アプリは、実際に自然環境を訪れたときに分泌されるエンドルフィンを誘発する360°バーチャルリアリティの風景をつくり出している。このアプリの利用後は、あらゆる活動がリフレッシュした気分でポジティブに臨めるよう設計されている。また、これにより良いクリエイティブ思考を引き出すことも可能である。カナダに本社を置くHoame社も、VRを利用して、さまざまなバーチャル環境を活用したガイド付ディープメディテーションを提供している。

キーポイント
ポリクライシス時代が続き、人間は深いつながりやつながることの意味、人智を超えた存在を感じたいと考えている。一方で、伝統的な宗教への信頼は薄れている。そんな中、多くの人がデジタルツールに目を向け、心身を超越した状態へと導く代替的なスピリチュアル体験はないかと探している。伝統的な宗教が現代生活に複雑な問題群をなげかけていることを考えると、これからはますます非宗教的なかたちで、日常を超越するような「なにか」に触れる機会が求められていくだろう。VRとメタバースは仮想という新たな環境を通じてユーザーに平穏をもたらす、計り知れない可能性を秘めている。
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